お子さまが食事を覚える第一歩となる離乳食。
初めて口にする食材ばかりでアレルギーを気にされる方も多いことでしょう。
大切なのはアレルギーに関する正しい知識をもつことです。
お子さまの体調をみながら、少しずつ食べる力を育てていきましょう。
また、お子さまのアレルギーで多い
「卵」「ミルク」「小麦」「魚」の4つの
アレルギーについてピックアップして紹介します。
医学博士。日本アレルギー学会指導医・専門医。国立病院機構福岡病院 小児科非常勤医師。昭和46年九州大学医学部卒。九州大学医学部講師、国立病院機構福岡病院小児科医長を経て現職。早くから食物アレルギーの専門医として研究、治療に積極的に取り組む。平成2年より同病院にて「食物アレルギー教室」を開催。講義や除去食の指導などで患者の家族の不安に寄り添い、多くの食物アレルギー児の寛解、耐性化をサポート。『食物アレルギー診療ガイドライン2005、2012』、『食物アレルギーによるアナフィラキシー学校対応マニュアル』に作成委員として関わる。
著書:国立病院機構福岡病院の食物アレルギー教室(講談社) 他
最近、乳児の食物アレルギーが増えています。食物アレルギーは、特定の食物を食べるとアレルギーを起こすことをいいます。このアレルギーの発症は特定の食物(アレルゲン)に感作されている《体の中でアレルゲンと反応するIgE抗体などができている》場合に起こります。この感作はどのようにして起こるのでしょうか?
乳児では口から体内に入った食物で感作される場合より、皮膚を通じて食物アレルゲンに感作される場合が多いことが分かってきました。これは生後から乳児期の皮膚の表皮(一番上の角質)がうすく十分に発達していないこと、乾燥しやすいことから、乳児湿疹などを起こしやすく、皮膚のバリア機能が低下して、皮膚から食物などのアレルゲンの影響を受けやすくなることが原因とされています。
離乳食の開始前から湿疹を繰り返している場合は、乳児期のアトピー性皮膚炎を発症していることがあり、この時食物アレルギーを同時に発症することも多いため、離乳食を進める上で湿疹がある場合は注意が必要になります。保湿剤や塗り薬で湿疹をしっかり治すことが大切です。
乳児の食物アレルギーは、原因食品が卵、牛乳、小麦の順に多いことが分かっています。アトピー性皮膚炎の乳児を検査すると、これらの原因食品に対するIgE抗体が陽性になる(感作されている)ことが多いようですが、必ずしも食物アレルギー症状を起こすとは限りません。専門医の指導を受けた上で、判断をするようにしましょう。
離乳食を開始する時には、お米、根菜などの野菜から徐々にはじめ、次に魚、大豆(発酵食品)など、徐々に種類を増やしていく方法がとられます。中には魚、大豆食品、エビなどにもアレルギーをもつことがあるため、はじめてあげる食品は少量から開始するようにしましょう。
離乳食で、はじめての食品、とくにアレルギーを起こしやすい食品をあげるときは、できるだけ単品で少量をあげて様子をみます。小麦ならうどん1cmから、卵は固ゆで卵黄の1/16個から、粉ミルクまたはヨーグルトは1さじから、大豆は納豆の1粒から、白身魚などは1かけから開始します。1日1種類、1さじからはじめて、できるだけ1日1さじずつ増やすようにします。1つの食品である程度量を増やして問題がなければ、別の食品を加えていきます。
すでにアレルギーがあることがわかった食品は、離乳食で利用ができません。代用できる食品の指導を受けましょう。
乳児期にみられる食物アレルギーの症状を知っておくことも大切です。これらの症状が出た場合は、すぐに小児科を受診しましょう。
じんましん、発疹
アレルゲン食品を食べるとすぐ、口の周りに赤い発疹(じんましん)がでて、痒がり、広がってくる。
咳
急に咳こむ、ゼロゼロ、ゼイゼイして呼吸がしにくい。
嘔吐
嘔吐する。腹痛は訴えられないため不機嫌に泣くことがあります。
これらの症状が重なって出てくる場合は、アナフィラキシーショック(ぐったりする、唇、爪の色、顔色がわるいなどの症状)に発展することがあるため、とくに早めの医療機関での治療が必要です。
食物アレルギーの多くは即時型で、じんましんや咳などの症状が食物をあげて2時間以内に急に出てきますが、乳児のアトピー性皮膚炎では、翌日に湿疹が悪化することがあります。これらの症状が出た場合は小児科へ行き、食べた食品と症状、出た時間を先生に伝えましよう。
食物アレルギーの可能性がある場合は小児科、アレルギー専門医で正しい診断を受けましょう。また痒みのある湿疹が続く場合も離乳食開始前に診断と治療指導を受けましょう。
アトピー性皮膚炎の診断を受けた場合、スキンケアと塗り薬で湿疹をしっかり治すことがなにより大切です。乳児のアトピー性皮膚炎は幼児期早期までにほとんどのお子さまが治ります。
離乳期に食物アレルギーがあると診断された場合、お子さまの原因食品は除去が必要になりますが、その他の食品は必要以上にこわがらず離乳食のはじめの進め方のとおり利用していきましょう。
乳児期に発症した食物アレルギーは、個人差はありますが幼児期以降にアレルギーを起こしにくくなる(耐性化治癒)傾向があり、小児科、専門病院では安全に食べられるようになったか確認するための「経口負荷試験」を行っています。
定期的に指導を受けることで食べられる食品を増やしていくことができます。
離乳食開始までに湿疹が続いてアトピー性皮膚炎がある場合、卵などの食物アレルギーを合併していることがあります。
卵は固ゆで卵黄から利用しますが、卵アレルギーが強い場合、離乳期は卵黄も除去が必要なことがあります。
小児科で食事指導を受けましょう。
母乳中心のお子さまで離乳食開始頃に粉ミルクを初めてあげて顔があかくなったり、咳こみが出る場合は、ミルクアレルギーを発症していることがあります。
検査でミルクアレルギーがわかったら、離乳食の粉ミルク代わりにアレルギー用粉ミルクを利用します。
ミルクアレルギーではヨーグルトなど乳製品にも注意します。
中期の小麦食品を開始する時は、少量のうどんやソーメンをあげて問題ないか確認しながら増やします。
じんましんや咳が出る場合は、小麦アレルギーを発症している可能性がありますのでアレルギーの検査を受けましょう。お麩は少量でも小麦のアレルゲン量が多く小麦アレルギーではとくに注意が必要です。小麦アレルギーでもしょうゆ、味噌や麦茶は利用できることが多いようです。
離乳食の初期のだしは昆布だしから開始しましょう。
なれてきたら、かつおだしを利用します。イリコだしは、お魚のアレルギーがあると口が赤くなったりじんましんがでることがあります。イリコだしで赤くなる場合は、白身魚をあげる前に魚アレルギーがあるか確認してもらってください。かつおだしは、魚アレルギーでも利用できることが多いようです。