成長に伴って新たな一面が表れる
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赤ちゃんから幼児へと、体の成長と共に情緒や自己表現力が育まれていきます。でも、ある時期から急に「人見知り」や「イヤイヤ」が始まり、それまでと違う子どもの様子に、戸惑ってしまうママは少なくありません。イライラしたり、必要以上に叱ってしまうことも起こりがちです。少し先の成長段階を知っておくだけで、安心できて気持ちの余裕も持てるはず。乳幼児期の心の発達について、藤崎春代先生にお話を伺いました。
藤崎春代先生
昭和女子大学人間社会学部教授。発達心理学が専門で、幼児期の心の成長、園生活への適応、ことばの育ちについて研究。生活心理研究所所長。研究所附属の心理臨床相談室では、子育てママの悩みにも応じ、カウンセリング等を行っている。著書は『「気になる」子どもの保育』(共著・ミネルヴァ書房)他。
生後1歳までは、赤ちゃんとママの密着度が強く、お世話が大変な時期。「赤ちゃんはいつも笑っている」とイメージしていた人は、一日中泣いてばかりの新生児に接して大いに戸惑うでしょう。
初心者ママが最初にぶつかる壁は、赤ちゃんが「おっぱいを飲んでくれない」「寝てくれない」「夜泣きが激しい」というとき。赤ちゃんが泣いて要求を知らせるのは当然ですが、わずかな物音で目が覚めてしまったり、寝かせたとたん泣き出すなど、神経過敏な赤ちゃんの場合、ママは「なぜ?」と悩みがちです。
これは、お世話する側に問題があるわけではなく、赤ちゃんの持って生まれた気質によるもの。ママが自分を責めたり落ち込むことはありません。「人一倍デリケートなのは、この子の個性」と受け止め、大らかな気持ちで向き合いましょう。
生後半年を過ぎ、情緒が発達してくると、“人見知り”をするようになります。親子の絆が深まり、「ママが一番安心」と認識している証。また、社会性が芽生えてきて、いつもそばにいるママ、家族、他の人といった区別ができるようになったと言えます。
日頃ママと二人だけで過ごす赤ちゃんは、人見知りが強いこともあるよう。大家族や保育園通いで多くの人に接している赤ちゃんは、あまり人見知りしないこともあります。人見知りには、個人差があり、成長に従って自然になくなります。小さい頃から集団の中で過ごすように心がけると、人見知りが出にくくなる傾向もあるようです。
ママから少しずつ離れて行動するようになるのが、次の段階。はいはいで興味のある対象に向かっていく際、途中でママの方を振り向くような様子が見られます。実はこのとき赤ちゃんは、先に進んで大丈夫かどうか、ママの表情を見て確かめているのです。ママが笑顔でうなづくと、赤ちゃんは安心して新たな冒険に出かけていきます。
2歳前後から始まるのが、何をするにも「いや!」と反応する第一次反抗期。「魔の2歳児」と称されるように、それまで素直だった子が急に駄々っ子になったように見えて、初めて子育てに苦痛を感じるママが少なくありません。
この時期は、多くの親がしつけを始める頃。食事、排泄、睡眠、着替えなどの生活習慣を身につけさせようと、「こうしなさい、ああしなさい」と子どもに指示を与えます。子どもにしてみれば、昨日までは、そのままの自分を受け入れてくれていたママの態度が急変し、驚き混乱するのも当然なこと。自分のペースで行動できないことに、「いや」と反応してしまいます。
まずはママ自身が、気持ちや時間の余裕を持つことが大切。しつけることに必死にならず、子どものペースを尊重してあげましょう。
反抗期というと、子どもがママを困らせようとしているみたいですが、何でも自分でやりたがるのは、子どもに自立心が芽生えてきた証拠です。身支度や片づけなど、できる限り自分でやらせて見守り、時間がかかる時は「ママがお手伝いしようか?」と声をかけるようにすると、子どもの「いやいや」が軽減するでしょう。
子どもの社会性や自立心が芽生えるのは、3歳を過ぎた頃から。“お友達”という認識を持ち、ママから離れて少しずつ子ども同士で遊べるようになります。
3歳未満では、他の子どもが遊ぶおもちゃを取ってしまうなど、トラブルになりがち。関わりの中で、おもちゃの貸し借りや順番に遊ぶというルールを教え、練習する機会をたくさん持つことが、社会性を育むことにつながります。
食事、排泄、洋服の着替えなど、自分でできるようになる時期は、個人差があるもの。他の子どもと比べるのはやめて、目の前の我が子のリズムを大切にすることです。子どもと接していて、些細なことにイライラしがちな時は、他に何か原因がないか自分の内面を見つめてみましょう。一人になってリラックスしたり、趣味を楽しむことで、育児ストレスを軽減する工夫をしていきましょう。笑顔で向き合える時間が増えれば、日一日と成長していく子どもの変化を楽しく受け止める余裕が出てきます。
「この時期にこんな様子が表れる」
〜子どもの心の育ちと対応ポイント〜
成長段階でさまざまな変化が表れてくるもの。あらかじめ知っておくと、戸惑うことが少ないでしょう。(時期はあくまでも目安で、個人差があります)
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あらゆる要求を満たすため、赤ちゃんは泣くのが仕事。ママは眠れず気が休まらず大変な一方、関わるほどに愛情が深まる時期。次第にお世話に慣れて余裕が持てるようになり、赤ちゃんも1日のリズムができて落ち着くはず。家族のサポートを得ながら、上手に乗り切りましょう。 |
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見慣れない人に表情を強ばらせたり、ママ以外の人が抱くと泣いてしまうことも。「ママのお友達よ」などと教え、笑顔で相手と接していると、子どもは安心して慣れてくるもの。無理に抱かせたりせず、様子を見ながら相手との距離を縮めるようにしましょう。ほとんど人見知りをしないからといって、親子の絆ができていないわけではないのでご心配なく。 |
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あまり甘えない子、ママべったりの子、甘え方の違いはその子の気質によるもの。つねにべったりだと、かわいい反面、うんざりする時もあるかも知れませんが、ちゃんと甘えさせてあげることが大事。その瞬間、ママの抱っこや温もりで安心したいのです。その都度ニーズを満たしてあげることで、親子の信頼が深まり、子どもの情緒も安定していきます。 |
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何でも指差して「これなあに?」と尋ねるようになるのは、すべての物に名前があると認知し、外の世界へ興味が広がってきたから。問いに答えて名称を教えてあげると、どんどん吸収して、ボキャブラリーが増えていきます。
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自立心が芽生え、何でも自分でやろうとする時期。先のことがわからないと、子どもの行動ははかどらないもの。出かける時は、お砂場セットやボールなど、遊ぶものを見せて、「お着替えしたら、公園に行こうね」と声かけを。時間の余裕をみて準備を始めると、ママもイライラしないですみます。 |
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まだまだ「自分が中心」で行動するため、他の子どもとおもちゃの取り合いになるのは当然。「○○ちゃんも遊びたいのよ。順番ね」「どうぞができるかな」と教え、何度もやりとりを練習していくのは大事。ママ同士で「お互い様」を了承しておくと、トラブル回避になります。 |
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思考力や想像力が発達し、おしゃべりも巧みになる頃。「なぜお空は青いの?」「お日様はどこから来るの?」といった質問をしてきます。知的好奇心のスイッチが入っている時なので、問いに答えてあげると、さらなる興味を引き出せるはず。答えにつまった時は、「○○ちゃんはどう思う?」と切り返しを。思いもよらぬ返事が返ってきて、ママも会話が楽しくなるでしょう。 |
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イラスト/サカモトアキコ 取材・文/中野洋子