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「水」について知ろう!ミルク用の水や飲み水をどう選ぶ?

ミルク用の水や飲み水をどう選ぶ?

「水」について知ろう!

記事提供:miku

汗をかくようになるこの時期、水分補給はとても大切です。 「水道水でも大丈夫?」という声も聞かれますが、子どもにはどんな水を飲ませればいいのでしょう?赤ちゃんのミルク作りの水には、どんな条件があるのでしょうか?栄養と健康に詳しい井上正子先生に、水の基礎的な情報を教えていただきました。

井上正子先生
医学博士、管理栄養士、日本医療栄養センター所長。北里大学保健衛生専門学院などの学生教育、管理栄養士の実務教育、地域住民や企業・団体に健康指導を行うほか、料理教室を開き、栄養バランスのとれた食の大切さを教えている。個別の丁寧な指導に定評がある。『ミネラルウォーターBOOK』(新星出版社)を監修。http://www.jmnc.co.jp/

赤ちゃんは体内の水分の半分が1日で入れ替わる

暑くなるこれからの季節、乳幼児は特に水分不足による熱中症などの注意が必要です。水分補給は、お茶やジュースなどではなく、水でとるのが基本。私たち人間の体のうち、大人で約6割、子どもで約7〜8割が、水分で構成されています。体内の血液循環や老廃物の排出、新陳代謝など、水は重要な役割を担っています。

乳幼児期の子どもは、体内の2分の1の水分量が、1日で入れ替わっています。もし、体調が悪くて母乳やミルクが飲めなかったり、下痢や嘔吐を起こしたり、暑い中で大量に汗をかいたりすると、たちまち体内の水分が不足して、脱水症になってしまいます。乳幼児は、のどの渇きを訴えることもできないので、突然ぐったりしてしまうこともあります。水分不足にならないよう、周囲の大人が注意することが大切です。

授乳中のお母さんは、母乳で水分が失われますから、当然、多くの水分を摂取する必要があります。

 

 

国が水質を厳しくチェックし安全性が確認されている水道水

大震災をきっかけに、水や食べ物の安全性について意識するようになった方は多いはず。「水道水を子どもに飲ませて大丈夫?」と不安に感じているお母さんもいるようです。実際、乳幼児のいるご家庭で、水道に浄水器を取りつけたり、ミネラルウォーターやウォーターサーバーを利用する家庭も増えているでしょう。

日本の場合、厚生労働省が、水道水質基準を、有害物質やpH値など51項目にわたって設け、 厳しくチェックしています。

河川や湖水などの原水を浄化・殺菌するプロセスでは、雑菌の繁殖を防ぐため必ず消毒用塩素が使われます(※1)。家庭に届く水道水に、残留塩素が0・1ppm(1リットル中に0・1mg)以上含まれていなければいけないと、法律で決められています。このおかげで、各家庭に供給される水道水は、衛生面と安全性において優れた水だと言えるわけです。

内臓の機能が未熟な乳幼児はミネラルの少ない軟水を

家庭や外出先などで、市販のミネラルウォーターを利用する方も増えています。水道水より安心だと思いがちですが(※2)、乳幼児に飲ませる際は、その硬度に気をつける必要があります。

水の硬度とは、1リットル中に含まれるカルシウムとマグネシウムの含有量から算出し、数値化されたもので、日本の場合、硬度100未満を「軟水」、硬度100以上を「硬水」と呼んでいます。一般に日本の水は、ミネラルが少ない軟水で、クセがなくまろやかなのが特徴です。一方、ヨーロッパの水は硬水がほとんどで、しかも殺菌・除菌処理をしていない天然水です(※3)。

赤ちゃんや小さい子どもは、胃腸や腎臓などの機能が未発達なため、栄養素の消化・吸収や、不要物のろ過・排泄がスムーズにできません。ミネラルウォーターに多く含まれるマグネシウムが必要以上に入ってきてしまうと、内臓に負担がかかり、下痢を起こしてしまうことがあります。

体調を崩す原因にもなるため、くれぐれもミネラルの多い水は飲ませないようにしましょう。ミネラルウォーターを利用する場合は、国産のもので、中でもできるだけミネラルが少ない軟水(硬度60以下)を選ぶこと。必ずミネラル含有量の表示を確かめることが大切です。

 

 

赤ちゃんのミルク用には煮沸した水道水が最適

赤ちゃんのミルクを作る水も、ミネラルが多いものは厳禁。一番手軽で安心して使えるのは水道水です。国産の粉ミルクは、日本の水道水で作った場合に、赤ちゃんに必要な、母乳とほぼ同等の栄養分が摂取できるように考えられています。市販のミネラルウォーターでミルクを作ると、その水の成分によっては、ミネラルの過剰摂取に繋がりかねません。

ミルクを作る際には、水道水を必ず沸騰させて殺菌することが大前提です。沸騰する段階で、気になる水道水の残留塩素も除去されます。それでも水道水に懸念があるときは、ミネラルが少ない軟水のミネラルウォーターや、「調乳用の水」として販売されているものを選びましょう。

最近は、宅配型のサーバーの水を利用するご家庭も増えています。比較的ミネラルが少なく、赤ちゃんのミルク用にも適していると謳われ、安心して飲めることはもちろん、重い水を運んでもらえる手軽さが、小さな子どもを抱えたお母さんには大助かりだという理由も大きいようです。一方、コックをひねるとお湯が出るため、幼児が火傷をしたなどの事故も発生しています。安全対策や設置場所、ランニングコスト、衛生面に配慮したメンテナンスなど、細かく調べた上で、設置を検討しましょう。

 

※1 雑菌が繁殖しやすい夏場は、水質を維持するために残留塩素の量が多くなる。 
※2 ミネラルウォーターや宅配水の場合、食品衛生法による水質基準18項目のみでチェック。
※3 ヨーロッパのミネラルウォーターはミネラル成分が均一で無殺菌でも安心して飲める。

miku 読者アンケート結果
miku 読者に聞きました 日常の飲用水に何を使っていますか?

※miku2013年3月発行号のアンケートより、集計数1646人分

水道水の残留塩素(カルキ)を取り除く方法

 

独特のカルキ臭は、水道水が美味しくないと感じる要因です。気になる場合は、次のような方法で除去することが可能。子どもに飲ませる上でもより安心です。

 

  • やかんや鍋に入れて一晩置き、翌日に使う
  • 透明なビンに入れてフタをせず、1時間ほど日光に当てる(ホコリ除けにガーゼなどをかぶせるとベター)
  • やかんや鍋に入れてフタをあけたまま、弱火で5〜10分沸騰させる(この方法は残留塩素のほか、トリハロメタンなどの有害物質の除去も可能)
  • 1リットルに対してレモン汁を数滴加える(レモンに含まれるビタミンCに塩素が化学反応を起こして、分解される)
  • 備長炭や竹炭を一緒に入れて一晩置く
  • 浄水器を取り付ける

失われた水分はこまめに水を飲んで補給を!

 

1日に体から排出する水分は、大人は約2.5l、子どもは1.2lと推定し、常に適切な水分量を保つことが、健康にもつながります。食事からの摂取で足りない水分は、こまめに水を飲むことで補いましょう。珈琲やお茶は利尿作用があり、ジュースは糖分の取り過ぎになりがち。体に必要な水分を補給するには、水を飲むのが一番です。

 

赤ちゃんの場合

基本は母乳かミルクで水分がとれていますが、お風呂上がりと外出から帰宅した時は、汗で失われた分を補給します。白湯を100〜150ml用意して、本人が飲みたい分を与えてあげましょう。白湯(沸騰させたお湯をぬるく冷ましたもの)ではなく、母乳でもOKです。離乳食が始まる頃には、白湯でなく、冷たくない水でも大丈夫です。

 

幼児の場合

食事以外で不足する水分を補う意味で、喉がかわいた時に、お茶やジュースではなく水を飲ませましょう。大量に汗をかいて脱水状態の時や、熱があるときなどは、素早く吸収されるイオン飲料がおすすめ。ただし糖分が多いので、普段は水を基本にしましょう。

 

赤ちゃんのミルク作りは水道水が基本!

 

粉ミルクは、水道水で調乳した時が、母乳に近い状態になります。ミネラルの過剰摂取は、体調不良の原因に。基本は、水道水を一度煮沸させ殺菌したもので調乳しましょう。代用の水でミルクを作る場合は、必ずミネラルの含有量をチェックしましょう。

 

  • やかんや鍋に水道水を入れフタをあけて5〜10分沸騰させる。(殺菌と同時にカルキも除去される)
  • 沸騰後少し冷めたお湯(70度以上)でミルクを溶かす。(時間がしばらく経って大気にふれると細菌が入ってしまう)
  • ほ乳びんを水で冷まし、体温くらいになったら飲ませましょう。

 

これはNG

  • 保温ポット・魔法瓶のお湯は6時間以上経つものは避ける。(ぬるくなったお湯は細菌が増える環境に)
  • 飲み残しのミルクを冷蔵庫で保存しない。(他の食品の細菌が付着する危険性がある)

 

【粉ミルクのメーカーがすすめる、水道水に代わる水の目安】
硬度60以下、pH6〜8。ナトリウム42mg/l以下、カルシウム285mg/l以下、マグネシウム30mg/l以下、カリウム367mg/l以下。

取材・文/中野洋子

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