世代間ギャップを感じたらどうする?
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「ミルクが足りてないんじゃない?」「抱き癖がつくわよ」「こんなに小さいのに預けるなんてかわいそう」祖父母世代との価値観の違いを感じ、自分の子育てに自信が持てなくなっていませんか?親も祖父母も子どもも、お互いに相手を認め合い、幸せに過ごすためのヒントを、心療内科医の明橋大二先生に伺いました。
明橋大二先生
子育てカウンセラー、心療内科医。国立京都
病院内科、名古屋大学医学部付属病院精
神科、愛知県立城山病院をへて、真生会富
山病院心療内科部長。著書は『子育てハッ
ピーアドバイス』シリーズ、『みんな輝ける子に』(1万年堂出版)など多数。
祖父母世代とパパママ世代では、育ってきた環境や文化が大きく異なるので、価値観や考え方は違って当たり前です。インターネットやスマホなど、30年前には考えられなかった時代を私たちは生きています。ですから、いっそ、相手は外国人だと考えてみてはどうでしょう。どちらが正しい・間違っているということではなく、その時代にはそれが正しかったということです。
祖父母が子育てに協力してくれるのはうれしいことですが、子育ての当事者は、あくまでも親です。親は自分たちの価値観を大切に、子育てをすればいい。祖父母の言うことが違うと思うならば、孫を心配してくれているという気持ちだけは受け取って、自分の中で線を引いてもいいのです。
子育ての当事者が親にあるということは、一方で、責任も親にあるということです。おじいちゃん、おばあちゃんにゆだねすぎない、まかせっきりにしないという意識を持ちましょう。
祖父母が子育てに協力してくれることは、当たり前ではありません。元気に見えても、若い時の体力とは違いますから、子どもと長時間過ごすのは想像以上に大変です。また、祖父母にも予定があるでしょう。自分の時間を使って孫の世話をしてくれている、そのことにまず感謝をしましょう。
自治体や産婦人科などで配られる「孫育て」のパンフレットに、○○してはいけませんという禁止事項が並んでいることがあります。感謝の前に「ダメ出し」をされると、「何でそんなことを言われてまで手伝わないといけないの」という気持ちになるでしょう。「助かります」「ありがとうございます」という感謝の気持ちを、きちんと言葉にして、伝
えましょう。
祖父母が子育てにかかわると、親が助かるだけでなく、子どもにも良い影響があります。親に時間的・精神的な余裕が生まれれば、子どもに優しくなれるでしょう。子どもは、時間のある祖父母の前では、のびのびと過ごすことができるし、親とは違う考え方に触れることもできます。いい意味で子育ての責任がない祖父母は、子どものありのままの姿を受け入れてくれるでしょう。子どもの自己肯定感を育てる上でも、祖父母はありがたい存在なのです。
抱き癖
(昭和30 年代〜) 抱き癖を付けると赤ちゃんはしょっちゅう泣くようになり、手がかかるようになる。しっかり泣かせた方が、肺が強くなると信じられていた。
泣いたら抱っこすることで、赤ちゃんは「自分は大切にされている」と感じる。その繰り返しが、自己肯定感を育む。
母乳とミルク
(昭和40 年代頃〜)母乳よりもミルクの方が、栄養があると言われていた。「3 時間おきの授乳」が強調され、3 時間経たずに赤ちゃんが泣くと、ミルクを足した方がいいと言われていた。1 歳を過ぎると母乳には栄養がなくなると信じられていた。
母乳は、赤ちゃんが欲しがるごとに与えてよい。母乳の場合は授乳間隔を気にすることはない。また、母乳をやめるタイミングも、事情が許せば、自然に卒乳を待てばよい。
果汁と離乳食
生後3、4 カ月に果汁やスープを飲ませると指導されていた。
離乳食の開始(5、6 カ月ごろ)より前に果汁やスープは不要。
離乳食を始めるタイミングや進め方は、子どもの成長に応じて。
日光浴
日光浴を勧める記述が母子手帳にあった。
直射日光を避けて、日陰で外気浴を心がける。夏場は、帽子や長袖の服などでUV ケアを。
おむつ外れ
2歳までにはおむつを外すのがいいと言われていた。
無理強いせずに、子どものペースで。成長は人それぞれなので、小学校に入るまでに外れればいいと、ゆったり構えてOK。
保育園の役割(3歳児神話)
小さいうちから保育園に預けるのはかわいそう。3歳までは母親が見るべきと言われていた。
平成10 年の厚生白書で「3 歳児神話には少なくとも合理的な根拠がない」と断定。子どもと一緒にいる時間に適切なかかわりがされているならば、子どもを預けることに罪悪感を持つことはない。保育園の役割も、一時保育や赤ちゃんサークルなど、専業主婦のママも利用しやすいように変わってきている。孤独な育児にならないよう、子育ての不安を和らげる役割も。
写真と思い出
フイルムカメラで撮影して現像し、全てプリントアウトして、アルバムに貼る。
デジカメやスマホで撮影したままアルバムがない場合も。データの保存をしていないと、スマホを落としたりして思い出の写真をなくすことも。
祖父母がお菓子やオモチャをすぐに与えたり、テレビをつけっぱなしにするので困っています
親が普段から気を付けているなら、たまにそんな日があっても、それほど悪影響はないでしょう。少しぐらいは大目に見ても良いのではないでしょうか。どうしても気になる時は、「テレビは1日30分までにしています」と家庭の方針を伝えてみましょう。やめてほしいことは、「〜しないで」と言うよりも「〜してもらえたら嬉しい」という伝え方をしてみましょう。祖父母には、一緒に昔話を読んだり、歌を歌ったりという情緒的なかかわりを増やしてもらえるといいですね。
祖父母に子どもを預ける時に、気を付けることは?
祖父母の都合を優先して無理のないスケジュールにすること。約束した帰宅時間をきちんと守ることも大切です。お願いしたいこと、気をつけて欲しいことは、紙に書いて伝えておくといいでしょう。特にアレルギーに関しては必ず伝えましょう。
イラスト/サカモトアキコ 取材・文/椹寛子