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6歳までは愛情あふれるスキンシップが最優先! 「レジリエンス〜立ち直る力」の育て方

6歳までは愛情あふれるスキンシップが最優先!

「レジリエンス〜立ち直る力」の育て方

記事提供:miku

「わが子に幸せな人生を歩んで欲しい」というのはすべての親の願い。困難に直面しても踏ん張り、転んでも立ち上がり、前向きに生きる力を身につけさせるには、どうしたらいいのでしょうか。心の土台ができあがる乳幼児期の関わりの重要性について、教育カウンセラーの諸富祥彦先生にお話を伺いました。

諸富祥彦先生
明治大学文学部教授、臨床心理士、上級教育カウンセラー。「すべての子どもはこの世に生まれてきた意味がある」というメッセージをベースに、約30 年にわたり、様々な子育ての悩みを抱える親に、具体的な解決法をアドバイスしている。著書は『男の子の育て方』『女の子の育て方』(WAVE出版)など多数。
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年齢と成長に応じて切り替わる子育ての3つのステージ

子育てにおいて大事なことは、親自身が安定した気持ちで、子どもに一貫して愛情を充分に注いであげること。逆にこれさえできていれば、他のことは後からでも補えると言えます。
 
お母さん、お父さんがいつも「幸せだな」「楽しいな」という気持ちで子どもと接していると、子どもの心には、「自分はこの世界に受け入れられている」「大事にされている」「愛されている」という感覚が育まれていきます。この自己肯定感が、人生を歩む上で一番大事な心の土台になります。
 
子育てのステージは、子どもの年齢と成長に応じて、「心の土台づくり期」「しつけ期」「見まもり期」の3つに分けることができます。
 
中でも「心の土台づくり期」の6歳までが最も重要です。ここがしっかりできていないと、成長していくに従って、自分の感情のコントロールができずに相手を攻撃したり、逆に打たれ弱く傷つきやすかったり、友だちや先生と信頼関係をうまく結べなくなるなど、弊害が生じることもあります。

6歳までは心の基盤づくり期。スキンシップで愛情表現を

6歳まではたっぷり愛情を注いで、自己肯定感を育むことが大切です。生後間もなくから、泣いたらすぐにお母さんやお父さんがきてあやしてくれる、おっぱいやおむつ替えしてくれる、自分がニコッと笑ったらお母さんやお父さんもニコッと笑みを返してくれるというように、自分の思いに応答してもらうことで子どもは親の愛情を感じ、自分が受け入れられているという自己肯定感を持つことができます。
 
「自分のことが好き」と思える。この基本的な感覚が心に根付いていると、将来、困難な状況に直面した時、簡単に諦めずに踏ん張ることができます。逆境に耐えて立ち直り、自力で前に向かおうとする力を「レジリエンス」(※)といいます。ストレスに耐えられるメンタルの強さや、簡単には折れないしなやかな心を育てるのが、乳幼児期の毎日の関わりです。

愛された実感がないとレジリエンスは育たず、いざという時に頑張ることができなくなります。例えば、些細なことで不登校になってしまう。大学で単位が取れないと安易に留年してしまう。仕事で辛いことがあるとすぐ会社を辞めてしまう……というように、丈夫な心の土台がないと踏ん張れず、前向きに人生を歩むことができないでしょう。
 
レジリエンスの形成には、子ども自身が「親からとことん愛された」と実感できることが大切です。それには言葉がけとスキンシップが一番です。「○○ちゃん、かわいいね。大好きよ」「ママとパパの大事な○○ちゃん」と言葉で伝え、ハグしたり、おでこをくっつけたり、ほっぺにチュッとしたり……。そうすることによって、子ども自身が皮膚感覚で「自分は認められているんだ」と感じることができるでしょう。

 

※「精神的回復力」「抵抗力」「復元力」「耐久力」「逆境に強い」を意味する心理学用語。

子育ての3つのステージ

年齢と成長に応じて子育てのギアチェンジをしていきましょう。

 

1心の土台づくり期(0〜6歳頃)
充分に愛情を注いであげて自己肯定感を育む

 

2しつけ期(6〜10歳頃)
社会的なルールやマナーを身につけさせる

 

3見まもり期(10〜18歳頃)
子どもが「自分づくり」に取り組むことを見守る

6歳までの関わり方が、子どもが将来、幸せな人生を歩めるかどうかのカギを握っています。日々のスキンシップによって「愛されている」という実感が持てるようにするのが基本。思いを受け止める、チャレンジする時は励ます、失敗しても「大丈夫、できるよ」と勇気づけるなど、ポジティブな言葉がけを心がけましょう。

上から「叱る」より「勇気づける」対等な関わりを

「何があっても大丈夫。いつも味方だよ」という思いを繰り返し伝えることも、レジリエンスを育てます。一方、自分の気持ちに余裕がある時はベタベタするけれど、気分が乗らない時は呼びかけにも応じない、イライラしたら怒鳴るなど対応に一貫性がないと、「昨日はパパと楽しく遊んだのに、今日はなぜイライラしているの?」と子どもが不安になります。親も心を安定させておくことが大切です。
 
一人でできることが増えてくる2〜3歳頃は、自分でトライしてできた喜びを体験し、再度チャレンジしようという気持ちが出てきます。その反面、時には「ママ、○○やって〜」と甘えてくることもあるもの。
 
甘えてくるのは、ほっとしたい、安心したい、親の温もりや優しさに触れたい時です。「抱っこして」「着せて」「食べさせて」といった言葉が出てきたら、ちょっと心に元気がないのかもしれません。
 
「今日はママにやって欲しいんだね」といったん気持ちを受け止めましょう。少し手を貸してあげるだけで、「自分でできたよ」と自信を持つこともあります。子どもが感情的になっている時、抱っこは一番の安定剤です。落ち着いたら温かく見守りながら、「こうしたらできるよ」と勇気付ける関わりをしてみるようにしましょう。

乳幼児期に心の土台がしっかり固まった上で、次のステージ(6〜10歳)に移行するのが理想です。子育ての第二ステージ「しつけ期」は、社会的なルールを学び、他の人との関わりや集団の中で行動する力を身につけていきます。

 

「この子がきちんとできるように」との思いが強いと指導が厳しくなりすぎ、それがエスカレートすると、「何度言ったらわかるの」「ダメね」などと何度も叱りつけてしまうことにもなります。愛情を持ってしつけているつもりが、子どもは「親から嫌われた」「自分はダメな子」と感じ、自己否定感を持ってしまい、子どもの心にダメージを与えることになりかねません。

 

『叱る』ことは上から目線の関わりです。子どもを一人前に扱うのではなく、いつまでも親の管理下に置いていることになり、子どもの自主性が育ちにくくなります。親の顔色を伺い、親の基準に合わせて叱られないような行動を取ろうとするでしょう。

 

「あなたならできるよ。期待しているよ」と信頼して見守る方が、子どもの自尊心を育みます。「やってごらん」と『勇気づける』関わり方を心がけましょう。

『イラッとしたら、クールダウンしよう!

目の前の子どもにイライラをぶつけてしまい、エスカレートすることもあります。イライラを感じたら、いったん子どもから離れましょう。気分をクールダウンする方法をいくつか知っておくといいですね。

 

 

深呼吸
鼻から大きく息を吸い、長く息を吐き出す。これを繰り返して行います。呼吸に集中すると気持ちが落ち着き冷静さを取り戻せます。

 

 

 

 

大声で歌う
好きな曲をかけて大きな声で歌うと心も弾んでくるはず。

 

アロマをかぐ
好きな香りをかぐことで、瞬時にリフレッシュできます。アロマオイルを身近に用意しておくのもおすすめ。

パンチする
クッションや枕など、柔らかいものを思いっきりパンチして、怒りや不安を発散させましょう。

 

トイレにこもる
イライラしたらトイレに入りましょう。個室の狭い空間なので、落ち着くことができます。子どもが安全な場所にいることを確認してからトイレに行きましょう。

 

紙に書き出す
心の中にあるモヤモヤした思い、イライラを、文字に書き出していきます。自分の感情を吐き出すことで、スッキリしてくるでしょう。

ハッピーな気分でいるために時には自分の時間を持とう

子育てにストレスはつきものです。日頃穏やかなお母さんでも心や体が疲れてくると、言うことを聞かない、思い通りに動かない子どもの言動にイライラしたり、つい声を荒げてしまうこともあるでしょう。
 
子どもに向き合うのが大変、辛い、イライラが続くと感じる時は、思いきって子どもと離れる時間を持つことです。

家族に子どもを任せて出かける、一時預かりを利用するなど、子どもから一時的に離れてリフレッシュしましょう。

 

一緒にいる時間に、お母さんやお父さんが笑顔でいてくれることが、子どもの心の栄養になります。ストレスを上手に発散して、ハッピーな気持ちで子どもに接することができるように心がけましょう。

イラスト/サカモトアキコ 取材・文/中野洋子

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