ママとパパも子どものリズムに合せて行動しよう
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よく寝る赤ちゃん、なかなか寝ない赤ちゃんと、眠り方には個人差があります。寝ついてくれないと、不安やイライラを抱くことも。まずは赤ちゃんの睡眠について理解しましょう。小児科医の内海裕美先生に教えていただきました。
内海裕美先生
医学博士、日本小児科学会認定医。吉村小児科(文京区)院長。地域で子育て支援セミナーの開催、子育て相談、ブックトーク、絵本の読み聞かせなどを行い、子育て支援に力を注いでいる。著作は『はじめよう臨床医にできる子育てサポート21』(医学書院)ほか。
「赤ちゃんは寝るのが仕事」という言葉通り、新生児期は1日のほとんどを寝て過ごします。お母さんのお腹の中から出てきた赤ちゃんは、昼と夜の区別がつきません。誕生して光の刺激を受けることで、神経のスイッチが入り体内時計が働き始めます。
朝が来ると明るくなり、夜は暗くなるという変化を繰り返し経験する中で、体が徐々に1日のサイクルに慣れてきます。特に朝、光を浴びることが重要です。太陽光には覚醒効果のあるブルーライトが含まれているので、朝の光で体内時計がリセットされ、脳や体が活動状態になるからです。
質の良い睡眠を取ることは、子どもの脳と体の発育に重要です。人の睡眠は、浅い眠り(レム睡眠)と深い眠り(ノンレム睡眠)で構成されています。大人は1サイクルが90分であるのに対し、子どもはその半分の40〜50分間です。
レム睡眠時には、昼間の出来事や情報を整理して記憶するなど、脳は活発に働いています。乳幼児期は頻繁に繰り返されるレム睡眠によって、脳の発達が大いに促されます。
また、骨や筋肉、各器官の発達を促す成長ホルモンは、眠っている間に盛んに分泌されます。眠りが浅い場合や睡眠時間が十分でないと、成長ホルモンの分泌量も減ってしまいます。
自然光の入る部屋が、赤ちゃんの寝室には理想的です。夜が開けて徐々に明るくなるので、自然な目覚めが促されます。遮光カーテンなどで真っ暗な状態にしておいては、体内時計が働きません。
赤ちゃんが眠っていても、毎朝同じ時刻にカーテンを開けましょう。夜も同じ時刻に消灯して寝かしつけます。食事やお風呂なども時間を決め、毎日同じ流れで過ごすようにすると、赤ちゃんの体内時計が安定してきます。
夜の授乳が頻繁にあるうちは、ママ自身が寝不足になりがちです。だからと言って、朝を迎えたのにいつまでも寝ているのはNG。眠りが足りない分は、赤ちゃんと一緒のお昼寝で補うことにして、1日の始まりはちゃんと起きて行動する方が気分も前向きになります。
タイムスケジュールが整っていると、ママも行動が楽になるはず。赤ちゃんのお世話をメインに、食事の支度、掃除、洗濯、買い物といった家事の時間、パソコンを見たり本を読む時間など、1日のスケジュールを大まかに決めてみましょう。毎日、同じことをするので、リズムが自然とでき、1日の流れがスムーズになります。
個人差はありますが、赤ちゃんも生後3〜5カ月頃になると、昼は起きて活動し、夜は朝まで眠るという生活に落ち着いてきます。夜中の授乳や多少の夜泣きがあっても、まとめて寝てくれるようになるでしょう。
私たちの暮らしは、夜も煌々とした灯りの下で過ごすのが当たり前になっています。でも、夜遅くまで電気のついた部屋、テレビの音がうるさい部屋に身を置く赤ちゃんは、常に強い刺激にさらされている状態です。なかなか寝付けない、睡眠が浅くて目が覚めてしまうなど、良い眠りが確保できません。
赤ちゃんが寝入るまで、部屋の照明を落とす、テレビを消して生活音も抑えるなど、工夫しましょう。静かな音楽をかけて、ママ自身のリラックスタイムにするのもいいですね。
夜間に強い光を浴びると、体内時計にたちまち狂いが生じてきます。
LED照明、テレビやパソコン、スマートフォンなどのブルーライトは、太陽光と同じ刺激を脳に与えるため、目が冴えて眠れなくなります。
乳幼児には大人以上に脳への刺激が強烈です。夜は特にスマホやタブレット端末などに、触れさせない方が賢明。オレンジ色の光には安らぎ効果があるので、室内照明は白熱灯がおすすめです。
良質な眠りを望むなら、就寝2時間前にブルーライトから離れることが大切です。ママやパパも、夜はパソコンを見ない、寝室にスマホを持ち込まない、子どもに合わせて早寝早起きにするなど、生活習慣を見直しましょう。
睡眠時の危険に注意!
赤ちゃんが眠る周囲には、余計なものを置かないことが基本。寝返りを打つようになると、思わぬ事故につながることがあります。環境を整えた上で、眠っている赤ちゃんのそばを離れないこと。お昼寝の時は、目の届く範囲に赤ちゃんを眠らせましょう。
●頭の周りに布類を置かない
寝返りをうった時に、ハンカチやタオルなどで口をふさいだり、首に巻きつくことがあります。
●ふかふかの寝具を使わない
うつぶせ寝になって、柔らかな枕や布団で口がふさがれることがあります。赤ちゃん用の寝具を使いましょう。
●ぬいぐるみなどを置かない
布の小物が枕元にあると、動いた時に口がふさがれることがあります。
●ひも類を手が届くところに置かない
ロールスクリーンのひもなどは、手が届くところに来ないように。ベッドの手すりにひもなどをかけていると、首に巻きつくことがあります。
日中、適度な遊びを経験することで、赤ちゃんは夜、深い眠りにつくことができます。まだ言葉を発しない乳時期でも、ママやパパの微笑み、話しかける声が、脳の活性を促します。昼間、赤ちゃんが目覚めている時は相手をしてあげると、夜になって自然な眠気に誘われるでしょう。
「あ〜う〜」と発する声に「なあに、○○ちゃん」と応答し、泣いたら「どうしたの?大丈夫よ」と声をかける、歌を歌ったり絵本の読み聞かせをするなど、ママやパパ自身も赤ちゃんとの交流を楽しみましょう。たくさん関わってもらって機嫌良く過ごせると、赤ちゃんの寝つきも良くなるでしょう。
体内時計が定着すると、幼児は目覚めてから約14時間後に、体内時計の指令でメラトニンが分泌して自然と眠くなります。例えば、夜8時に眠りに就くには、朝6時が起床のベストタイム。昼間はお散歩に出てお日様の光を浴び、公園などの外遊びで体を動かすと、程よく疲れて眠りに入りやすくなるでしょう。
なかなか寝てくれないと、焦ったりイライラしてしまうもの。本やネットで、様々な寝かしつけの方法が紹介されていますが、万人向けというものはありません。いろいろ試して、我が子が寝入りやすい方法を見つけましょう。
黄昏泣きと言って、決まって夕方になるとぐずることがあります。外に出ると気分が変わり、不思議と泣き止むこともあります。赤ちゃんが泣き出したら、夕食の支度の手を止めて、抱っこやおんぶで近所を散歩してみましょう。黄昏泣きや夜泣きは、成長のプロセスでいずれ卒業していきます。
赤ちゃんの寝つきが悪い時、夜泣きが続く時などは、イライラや辛さを一人で抱えないことです。早めに子育て支援などへサポートを求めましょう。
どうしても辛いときには、イライラを抑える漢方薬(親子共に服用する場合もある)などもありますから、かかりつけ医に相談してみましょう。
●ミルクをあげる、おむつを換える、抱っこする、暑さ寒さを確認する。
●おくるみで包む。
●コンビニ袋などをくしゃくしゃさせて音をたてる(窒息の心配があるので、赤ちゃんに渡したり置きっぱなしにしないこと)。
●泣いている赤ちゃんを安全な状態に寝かせて、ママ自身が少しリラックスする。(トイレでひとりになる、音楽を聴く、窓を開けて風に当たるなど)。
※泣いている赤ちゃんの口を塞がない。激しい揺さぶりは脳にダメージを与えるためNG。夜泣きが続き気になる場合は、あらかじめ近所に挨拶しておくのも一案。
動画をチェック!
『赤ちゃんが泣きやまない〜泣きへの対処と理解のために〜』
(厚生労働省動画)
赤ちゃんが泣いた時の対処法を動画で紹介しています。
泣きやまずに困った時は参考に。
http://www.youtube.com/watch?v=T09gzgGUOnY
「YouTube赤ちゃんが泣きやまない」で検索
イラスト/サカモトアキコ 取材・文/中野洋子