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No.90 

祖母の冷や汁(ひやしる)

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 98歳になる祖母は、母が3歳のころ戦争で夫を亡くし、働きながら子育てをしました。いわばワーキングマザーの先輩です。

 その祖母はおしゃべり好きで好奇心旺盛、とりわけ食べることが大好き。知人や親戚を招いての米寿のお祝いは、彼女のたっての希望でフランス料理店でした。繰り返し聞いた祖母の思い出話には、女学校の寄宿舎をこっそり抜け出してお饅頭を買いに走った武勇伝や、銀座のレストランでのスイート・ポテトとの衝撃的な出会い、仕事から帰宅して炊きあがったばかりのご飯をいただくとき、「どうしてご飯ってこんなに美味しいんだろう、日本に生まれてよかった!」と毎日、感謝感激していた話・・・などなど。私が食いしん坊なのも、たぶん祖母の血を引き継いだのでしょう。

 子どもの頃、夏休みは阿蘇にある祖母の家で過ごしました。毎朝のごはんには、阿蘇のあまい地下水でつくった「冷や汁」(ひやしる)が出されました。炊き立ての麦ご飯の上に、農家の方が届けて下さるみずみずしいきゅうりの輪切りをたっぷりのせ、摘んだばかりのみょうがや紫蘇、かつおとゴマで香ばしい、冷たいお味噌汁をかけていただきます。食欲のない夏の朝でもそのすがすがしい喉越しを求めて、みんな我先にお代わりをしました。

 足の怪我をして、祖母はもう長いこと病院暮らしになってしまい、今祖母の家には誰もいません。冷や汁の味が忘れられず、作り方を母に訪ねたら、「水は、前日に地下水を汲んで、冷蔵庫で冷やしておくとよ。」と教わりました。やっぱり水が大切なのですね。宮崎の郷土料理として有名ですが、祖母の冷や汁にはお豆腐は入れません。

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