この冬の記録的な寒さで話題に上っているのが「ヒートショック」。特に心配されるのが、寒い浴室やトイレなどでのヒートショックによる高齢者の事故死です。省エネ普及指導に関わる者には常識なのですが、一般にはあまり知られていなかったようですね。
東京都消防局の調査では2011年に入浴中に亡くなった人は年間1万7千人と推計され、交通事故死(約6,700人:厚生労働省調査)の約2.5倍にも上ります。特に注意が必要なのは65歳以上のシニア、80歳以上になるとさらにリスクが高まります。
原因は家の中の温度差。寒い脱衣所で服を脱ぐと体温が低下し血圧が急上昇、浴室がもっと寒ければさらに上昇します。そこで湯船につかり、温まったら今度は血圧が急降下、意識障害や不整脈を起こしやすくなるといわれます。
先の調査に東京都消防局と共に関わっている東京都健康長寿医療センターが挙げる入浴のヒートショック対策は以下の3つ。
(1)湯の温度は体温に近い38度から40度に。
(2)浴室の温度をあげること。(暖房があれば入浴する数分前にスイッチオン、暖房がない場合、湯面に直接熱いシャワーをかけて蒸気をあげ、浴室の温度を上げておく。)
(3)入浴時間を寒さが厳しくなる日没前にずらす。家族やヘルパーが付き添う。公衆浴場を利用する。
人の体は気温20度前後だとストレスが少なく、10度以下になると生理的、体力的な機能が低下するそうです。
この冬もひきつづき節電が求められていますが、断熱性能があまり高くない多くの住宅においては、(特に高齢者のいる家庭では)部屋の温度差を解消するためのエネルギーは意識して使う必要があります。住宅の断熱性能を上げ、部屋の中であたたかく過ごす工夫は、快適さだけでなく安全対策の省エネにもつながるのです。