3月。離れて暮らす私の社会人の子供たちは、二人とも新型コロナウイルス対策のマスクをしていません。娘は「かかる気がしない。」、息子は、「どうせかかるし。抗体つくるよ。」
早く言えば、「マスクが買えない」ということ!あるいは、品薄なマスクを患者さんや医療関係者に回すための、彼らなりの強がりです。
親としてはヒヤッとします。マスクは感染防御にはさほど役立たないと専門家に言われても、ウイルス保持者になることだってありうるし。
でも、品薄のマスクは患者さんや医療関係者の方々が優先だから、成人した健康な子どもに仕送りするために私が朝からドラッグストアに並ぶわけにもいきません。
そんな私は、肺に既往症があり、ひとたびコロナにかかってしまうと人工呼吸器が必要になる部類と自覚しています。飛沫感染防止のためマスクは必需品です。
でも、福岡市にコロナ感染者が出たとき、私は3枚しか、マスクの持ち合わせがありませんでした。手作りしようとガーゼを買いに行くも、ガーゼも売り切れが続いていました。
どうしたか。時々消毒スプレーしながら、結局マスク3枚で約1か月持たせています。エネルギーやお金の節約啓発をする私でも、まさか、マスクの節約をすることになるなんて!思いもよりませんでした。
「マスクをそんなに使いまわして、清潔なの?」と言われたら、はなはだ疑問ですが、品薄マスクは患者さんや医療関係者が最優先。幸い、私は雑菌や汚れには強く(笑)、電車の中などでの飛沫感染さえ防げればいいのです。でも感染してしまったら毎日使い捨てですから、今のようなマスク品薄状況はとても心細い。
早く潤沢に出回ってほしいなあと思います。
さて、4月末に予定されているべートーヴェンのミサ・ソレムニス(荘厳ミサ)の九響演奏会に向けて、中止となっていた合唱練習が、より広い会場に変更して“一瞬”再開されました。食品企業に勤めるメンバーは、会社の禁止命令により、また高齢のメンバー、そして私のような肺に既往症がある団員は、自己管理として自宅練習としました。
その日練習に参加した団員は、ホールの扉を開放し、一人あたり4平米の面積を確保して、全員マスクで歌ったそうです。チケット発売済みのコンサートをなんとか成功させよう、文化活動をなんとか守りたいと、リスクをとる人たちもいるのです。
欧米に住む友人たちは不便な外出禁止を強いられる中、日本は、社会・経済・文化面でぎりぎり「普通の暮らし」を守ろうと頑張っています。おかれた状況や取るべきリスクは個人個人で違います。ふだんは同調圧力が強いと感じられる日本社会ですが、コロナ対策に関しては、それぞれが互いの事情を尊重し合いながら自分の頭で考えて、(一部、トイレットペーパー等デマ騒動はあるものの)冷静に、心中は熱く、行動していると思います。
写真:練習中の楽譜と、肺が弱い私のあまりのマスク節約ぶりを見かねた息子がくれた「洗えるマスク」。ミサ・ソレムニスの演奏会は来年3月31日に延期が決定しました。長期戦も覚悟かな。息子が「僕は抗体作るし。」と回してくれたマスクは、お守りに。
(2020年3月 林 真実)