2020年10月、菅首相が2050年までに温室効果ガスの排出をゼロにする、「カーボンニュートラル宣言」をしたことは皆さんもご存じですね。一部の専門家からは、世界的には遅い宣言だったとも言われています。
そもそも、カーボンニュートラルって何でしょう?
車や公共交通機関で移動する、お湯を沸かす、冷暖房する、調理をする、明かりをとる、掃除機をかける・・・私たちの暮らしの実に多くの行動が、エネルギー消費を伴います。そのエネルギーの多くは今、石油や石炭、天然ガスなどの化石燃料を燃やすことで得られています。化石燃料を燃やせば、喫緊の課題である地球温暖化を進行させるCO2やメタン・フロンなどの温室効果ガスを出してしまうのです。
カーボンニュートラルは、それらの排出量を、例えば、このエッセイでもご紹介してきた省エネ・3R行動をはじめ、植林して緑を育てる(光合成によりCO2を吸収しますよね)、温室効果ガスを何かに吸着させて地中に埋めるなどにより排出分を差し引きする、大もとのエネルギーを再生可能エネルギーにシフトしたりすることで、±0、つまり正味ゼロにする、ということです。現代に生きていればどうしたって地球環境に負荷をかけてしまっていますから、カーボンゼロではないところがミソです。
それらを差し引きしたらプラスマイナスゼロになる目標年度が2050年ということですが、2050年まで「あと30年もある」と思ってはいけません。少なくとも私くらいまで生きてきた人は、30年があっという間であることは、実感としてわかると思います。
カーボンニュートラルは、「志がある人が取り組んでいつかそのうちたどり着ければいい」とか、「今スグ実現は無理だから、2030年や40年くらいから頑張ればいい」、「そのうちイノベーションが起こりムーンショット※的なすごい技術が開発されるだろうから、今は何もしなくてもいい」とか、「生活者が効果の低いことを積み上げるより、排出の多い事業者が一気に実現すればよい」ものでは決してありません。
※ムーンショット・・・困難な、あるいは莫大な費用がかかるが、実現すれば大きなインパクトをもたらす壮大な目標や挑戦のこと。
私は(もう25年も)講演やセミナーで「一人の百歩より100人の一歩」と申し上げてきました。これは、どんなに高い山でも一歩一歩登ればいつか必ず山頂にたどりつくというイメージではなく、むしろたくさんの人が励ましあいながら一緒にワーッと海岸清掃をすれば、短時間で効率よくきれいな浜になっていくイメージでした。
でももう既に、100人の一歩ではなく、100人の百歩でも間に合わないところまで来てしまいました。誰一人例外なく、みんながジブンゴトとして捉え、一日も早く本気で取り組むことが必要です。
だって、こうしている今だって、進行する地球温暖化によって多くの動植物がどんどん絶滅していっているのですから。温暖化問題は、待ったなし!いつかそのうちではだめなのです。
2050年には私は寿命を迎えているかもですが、その時30歳を超えた孫たちに、「おばあちゃんたちが対策をサボったからこんな地球になった」と言われたくありません。既に世界中の若者たちから、大人たちは非難されています。今すぐできることを、大小に関わらず、行動していきましょう。
「そういわれても、何から取り組んでいけばいいのかわからないよ」という人へ。
暮らしの中でどんなことをすればカーボンニュートラルに近づいていくのか、皆さんは生活の中で意識していますか?「その2」で一緒に考えていきましょう。
(2021年3月 林 真実)